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インタビュー「この人の想い」

第2回 早崎昭夫 さん (株)高島屋 MD本部 食品・食料品ディビジョン 部長

もの作りの視点について

 もの作りの視点やポイントについてお聞かせください。

早崎昭夫_1  私たち百貨店が売っているものは、日常的な商品ですが、購買動機は非日常的です。いかに“非日常的なもの”を売るかということが、百貨店の使命ではないかと思っています。そこで“非日常”とは何かと考えた時に、例えば同じものでもお客さんが体験したことがない味を提供することではないかと考えます。

 それには、いま市場に出ているものの相対価値のレベルをもう少し上げることができれば、お客様にとって未知の味になります。それは“プロダクトアウト”の視点です。

 つまり、これからはプロダクトアウトの視点で非日常を演出する商品を作り、市場を創出していくのか、それとも決められた(既存の)マーケットの中で戦略を練っていくのか、分けて考えなければいけないのではないかと思っています。今までは後者の考え方であるマーケットインの視点でしか見ていなかったのではないかと思います。

食品を取り巻く課題

 昨今の食を取り巻く課題についてお聞かせください。

 人口が減少傾向にあり、市場が狭くなっている中で、業界の動向をみると、小売市場における業態の同質化、そして景気悪化による価格競争があげられます。

 また消費者の意識は、色々な業界の不祥事などにより安全安心への志向が高まっており、上質志向、本物志向が本格化してきました。しかし本格化してきた中で、本当においしいものは何か、ということは見えてきていないのではないかと思います。また、消費者へ向けて、食に対する正しい情報の伝達がなされていないということもあげられます。

 生産者の方から見ると、市場が求めているものと、生産者が作りたいものが異なっていると感じます。生産者は自分たちが食べるものは、きちんと在来種を使って生産しています。在来種だけ生産していては自給率が保てないので否定はしませんが、市場が求めている規格のものを作って出せば、供給過多になり値段が下がり、生産者の収入につながりません。マーケットインの問題点はそこにあるのではないかと考えています。

農業の再生

 食を通じた地域活性化はそこが狙いです。地域ごとに特徴のあるものがあるはずです。

早崎昭夫_2 そこで特徴のあるものは何か。例えば漬物をつくる場合、F1(雑種第一代)の青首大根はどの地域でも生産しており、それを使って漬物を作っても特徴はでないのです。

 しかし同じF1の青首大根でも、昼夜の寒暖差が大きな地域で作る、肥料の播き方を工夫するなど、おいしいものを求めて作れば差別化ができます。

 また非日常的なものを提供するには、その地域の伝統野菜しかないのではないでしょうか。伝統野菜をきちんと作っていけば、地域の差が出てくるので勝負ができます。

 マーケットインの視点でつくるか、プロダクトアウトの視点でつくるかで、自ずと農業のやり方が変わってくると思います。

 伝統野菜を作りはじめるとき、現在作っているものをやめて伝統野菜を作ったところで、本当に売れるのだろうかと生産者はとても不安です。

 日本の農業を再生するためには、「農家の自立と安定収入」が重要です。そのためにはまず市場を確保しなければいけません。そして流通構造の改革をしなければいけない。つまり、今は市場が値段を決めているため、農家の収入につながっていかないので、一次産業、二次産業、三次産業が所得を等配分できるような流通システムをつくる必要があると考えています。併せて、消費者の意識の改革も必要です。こういった日本の農業の再生に向けた仕組みつくりが行われれば、地方の活性化にもつながり、伝統野菜を作っていけば、日本の食文化の継承にもつながっていきます。ひいては自給率の高まりにつなげていけるのではないかと考えているのです。

お客様はどこを見ているか

 消費者は今までは店頭に並んでいる商品から選別してきました。今はお取り寄せなども含め、自分で選ぶことができます。その時に、商品の価値をどこに見出すのでしょうか。

 おいしいものを食べるためには、商品の価値が高ければ、いくらでもお金を出すという既存の層がいます。また中間層でも節目ごと、ハレの日においしいものを食べたい、と考えている新しい層も狙うことができます。

 消費者はいつも低価格なものを買うわけではなく、ハレの日にはちょっといいものを食べたいと考えています。食機会の多様化と言えるのではないでしょうか。

 消費者は日常と非日常を分けていると思います。今は非日常の商品がないので、その非日常を作っていけば、市場を拡大できるのではないかと思っています。

 その“非日常”をどのように作っていきますか。

早崎昭夫_3 誰でも、今まで自分が食べたものの中で一番おいしいという相対評価はできます。その相対評価で100点満点のものが、絶対評価の中で何点かという見方ができないといけません。

 ある酪農家からプリンをつくりたいという相談がありました。そこで食品製造業者には作れない、酪農家だから作れるプリンをつくるべきだ、とアドバイスしました。それは、酪農家しか使用できない無殺菌の牛乳を使ったプリンをつくるということです。食品は熱を加える回数が多いほどタンパク質が変性し、味が落ちてしまいます。無殺菌の牛乳を使うことで、殺菌回数を1回分少なくすることができ、タンパク質の変性を抑えることができます。そうすることで、牛乳の風味がつよい、おいしいプリンをつくることができるというわけです。

 今までと違う味を提供するためにはそういうことをしなければいけません。それが非日常であり、少々値段が高くても、絶対価値が高ければ優位性があるということになります。

 そのためには、おいしい理屈、科学的な裏づけをお客様にきちんと教えることだと思っています。それは百貨店にしかできません。なぜなら百貨店は対面販売なので、お客様にしっかりと情報を流すこと、おいしい理屈を訴えることができるからです。

 また生産者がおいしいものをつくるための理屈を知らないことも問題です。おいしいものを作るための科学的な理屈を教えることが重要だと思っています。

商品を選ぶ視点

 商品を選ぶ視点、ポイントは何ですか。

 商品をただ集めて販売するだけではダメなのです。私は今年の新商品や人気商品には興味がありません。 むしろ“同じものでももっとおいしいものはないか”という視点をいつももっています。 おいしいものには必ず理由があるのです。

研究機関との連携、人材育成

 おいしいものを作るため、その理屈を伝えるために、研究機関などと手を組む意味はありますか。

 意味があると考えています。 農業試験場などと他の県に負けない食味が出せるような品種や栽培方法について一緒に取組んだらおもしろいのではないかと思います。

 研究者は自分のやりたいテーマに沿って研究している場合が多いのですが、それをもの作りに生かしていくにはどのように連携すればよいと思いますか。

早崎昭夫_4 コーディネーターが必要です。研究者は専門分野での研究を行っているため、他の領域との関連をトータルコーディネートできる人がいれば最高だと思います。ただ、コーディネートをできる人がなかなかいないのが現状です。これから育てなければいけないと思います。コーディネーターが、どれだけ専門家と会話ができるかが重要です。そういう人が育っていけば、地域間競争が活発になり、おもしろくなるのではないでしょうか。

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